行政の関わり方に問題あり
地域猫活動を始めるためには、行政の関わり方が大変重要な役割を担っているのだが、SNSで見聞きする各地の情報では、各自治体の行政職員の関わり方に明確な差があるように思える。
2020年改正動物愛護法第37条の三2項に、「指定都市、中核市及びその他政令で定める市以外の市町村(特別区を含む)は、動愛法に関する事務を行わせるため、動物愛護管理担当職員を置くよう努めるものとする」と具体的に改正された。
これによって市町村には動物の担当職員を設置する努力義務が課せられたので、やる気を見せる市町村は動物担当職員が配置されているはずである。
今までは、環境省から通達される動物業務は、都道府県、政令指定都市がやることと捉えていて、各市町村レベルでは「動物の事は自分たちの仕事ではない。県の仕事だ」と堂々と話す職員も多かった。
私が全国を回って動物行政担当職員研修の講師として「地域猫活動のすすめ」を話した時でも、県主催の研修会では県関係職員からは真剣な質問が多くありやる気が見られるが、参加していた市町村関係職員は、関係ないけれど呼ばれたから来ただけだと言わんばかりに全く覇気なく座って聞いるだけの姿であった。当時政令指定都市の横浜市職員には分からなかった行政の壁があることを教えられ、かなりの温度差があることに驚いた。
地域猫活動は、住民の活動を行政と猫活動ボランティアが支援、協力することで進んでいく。そのためには、行政が正しい知識を得て、広く住民達に広報手段を講じて地域猫活動を普及啓発するという重要な役割がある。
令和2年4月環境省告示第53号の「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」では、地域猫活動の検討、適切な情報発信をすること、地域猫活動に対する理解の促進とある。そのために、どこの行政も何かしらのアクションをするはずであるが、地域の違いはあっても「真の地域猫活動」とは何かを理解し、間違った解釈で楽をすることのないように十分検討してから施策に取り掛かってほしい。もし主旨とは違うようであれば、「地域猫活動」と名付けないで独自の名前を考えてほしい。行政の影響力は大きいから、変な誤解が生じてしまう。
地域猫活動は、住民の住民による住民のための活動であり、行政は住民活動がスムーズに進むように後方支援することを忘れないでほしい。行政として、指針が出たからとりあえずやった感的なものや行政が楽をするために実施するものではない。
まず行政のやるべきことは、得意とする広報活動である。正しい情報を地域に応じた広報手段で知らせすることだろう。広報紙、ポスター、チラシやマスコミへの投げ込み、講演会、セミナー、映画会などの開催はお手の物だろう。
次に必要なことは、ノラ猫トラブルが起こっている地域や起こりそうな地域へ、実際に足を運んで現場を確認し、周辺住民や自治会・町内会長などの話を聞くことから始まる。
揉めている人同士やトラブル原因の人と穏便に接することが出来るのは、公平に判断できる行政が第三者として関わることが一番であり、トラブル解決の仲介に関わることである。決して個人で交渉に当たらせるような無理なお願いをするべきではない。
地域猫活動をしたければ、自分たちで話しをまとめるように勧めている行政があるようだが言語道断である。ここで行政が説明に入ってこその地域猫活動である。
さらに解決方法の一つである地域猫活動の事を紹介、説明するために、チラシを作成して配布や掲示、回覧をしてより多くの住民に知ってもらうことだ。
住民からの反応や関心が出てくれば、セミナーや説明会、上映会などを開催してさらに具体的な話へと導いていく。
結構時間と労力を使うが、結果が出たと報告をされたら嬉しいものだ。
不妊去勢手術費用の補助制度やボランティア制度、ガイドライン制定など、単に他都市の制度作りを真似して終わりにするのではなく、じっくり検討した上で必ず現場に沿う自分の地域に合った方法を探してほしい。
動物担当職員がいるのならば尚更、楽をする解決方法を選択しないで自分たちの仕事として住民のために汗をかいてほしい。