地域猫推進寺

Q&A

飼い主のいない猫(ノラ猫)はなぜいるの?

もともと飼われていた猫達が、子猫が生まれて増えすぎてしまったこと、引っ越しや病気など飼い主の都合で捨てられたり置き去りにされたことが始まりで、旺盛な繁殖力のために増え続けてきました。
昔は、ストレスや病気、寒さ等に耐えられなくて死んでいたため増えすぎることなく適度な個体数が保たれていました。

ところが最近では、温暖化や猫の天敵である犬がしっかり管理されて放れることなく飼育されたことで猫のストレスは無くなり、住宅密集で寒さをしのげる絶好の場所が増え自由に行き来出来るようになりました。また、栄養の良い、手軽なフードが開発されたことで栄養状態、繁殖力、子猫の生存率も格段に向上し、爆発的に増加しているのが現状です。
さらに、ノラ猫の姿を目にする機会が増えると、可哀想との感情だけでむやみにエサだけを与える人が出現したことも増えすぎを助長しています。

ただ、人間がノラ猫を誕生させてしまったのですから、人間が責任をもって手を差しのべて解決を図る必要があります。

ノラ猫を捕まえて処分すれば良いのではないか?

「動物の愛護及び管理に関する法律」において、猫は「愛護動物」とされているため、その扱いも慎重に判断するところであり殺処分前提の捕獲は行いません。
また、猫は約5千年の間、人の身近な存在に深く関わりを持ってきた動物です。増えすぎて迷惑だから捕獲して処分することで解決を図る発想は、あまりに短絡的です。
捕獲処分して単に猫の数だけを減らしても、繁殖力旺盛な猫は子孫存続のために益々子猫を産んでいきます。繁殖時期は年2回と言われていた昔と違って、今では年3回は普通です。
1回の出産で5~6匹の子猫を産み、生まれた子猫が6か月経つと繁殖可能になるため爆発的に増えて行きます。 これは、昭和の時代に続けていた捕獲処分対策では効果がなかったことを示しています。
迷惑だから排除という考え方ではなく、命あるものとして人と猫が共存できる対策としての「地域猫活動」を実践し解決していきましょう。

エサやりを止めれば良いのではないか?

ノラ猫にエサを与えている人へエサやりを止めるように話しても、感情的な対立になるだけで、逆にコソコソと隠れてでもやるため問題解決にはなりません。
例えエサやりを止めたとしても、一時的にノラ猫達は居なくなるかもしれませんが、ノラ猫の習性から、強いオス猫は新しいテリトリー(縄張り)へ出て行って戦いを挑み、勝てばその場所に居付くでしょうが、それ以外の大半の弱い猫達は、今いる自分のテリトリーに戻って生活します。
また、ノラ猫にエサを与えないようにすると、ゴミを荒らしたり、家に入って食べ物を物色したり、鯉や小鳥などを襲ったりして生きていくために何でもすることになり、新たな被害が周辺に拡散することになります。

そこで、エサを与えている人を責めるのではなく、逆にしっかりと猫の世話や管理をしてもらうのです。対面してエサを与えることで、健康状態や未手術猫や知らない猫などの猫情報を把握するには欠かせません。
地域住民でよく話し合い、地域のルールを決めてそれに従ってエサを与える、いわゆる「地域猫活動」の中心的役割を担ってもらうのです。
「地域猫活動」では、決してエサを与える人だけが全てを任されるのではなく、住民が話し合いの中で役割分担をした認められた人のことですから、不妊去勢手術や清掃などは住民みんなで協力して実施するものです。

「ノラ猫」と「飼い猫」の区別はつかないの?

猫は犬と違って、つなぐ義務も登録制もありません。したがって、飼い猫であっても完全室内飼育以外は自由に外の出入りが可能なため、首輪やリボン等の目印をしている場合を除いては、「ノラ猫」と区別がつきません。
マイクロチップを装着していても外見からの区別はつきませんが、リーダーでの読み取りで飼い猫は飼い主が判明します。
また外にいる猫にエサを与えている人に、飼い主としての責任を負わせることはできません。あくまでも、本人の所有、占有の意思次第であり強要はできません。

不妊去勢手術を個人で負担するには限界があるのでは?

個人の負担でノラ猫の不妊去勢手術を行っていたケースは多かったですが、その経済的な負担は大きく、限界があり長続きはしません。だからといって止めてしまえば、ものの2年で元の状態に戻ってしまい今までの努力が水の泡になってしまいます。
人の手で増やしたしまったノラ猫から発生する問題を解決するためには、「地域の環境問題」との共通認識を持って、地域に住んでいる人達みんなで取り組むことが必要になります。まず、自治会、町内会等の地域へ提案してみましょう。
地域の中で理解が深まれば、手術費用もバザーや募金等の協力が得られやすくなります。
更に、行政へ「地域猫活動」の実施に向けての相談をしましょう。「地域猫活動」では不妊去勢手術が必須ですし、不妊去勢手術費用助成金などの制度があるかも知れないので確認してみましょう。

地域猫とは?

地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている、特定の飼い主のいない猫。
地域住民の理解と協力の基に、地域で認められた飼育管理者を明確にし、飼育する対象の猫を把握するとともに、フードやふん尿の管理、不妊去勢手術の徹底、周辺美化など地域のルールに基づいて適切に飼育管理し、これ以上数を増やさず一代限りの命を全うさせる猫を指します。

このように、ノラ猫を地域住民で役割分担しながら飼育管理していくことで、「ノラ猫の数を減らしながら、周辺への被害をなくして周辺環境を良くしていく」ということが目的で、最終的には「屋内飼育の飼い猫だけになり、外にいるノラ猫がいなくなる」までの過渡的方法と言えます。

ノラ猫と地域猫の違いは何ですか?

可哀想だからと単にエサだけを与えている猫や不妊去勢手術もしていない猫は、「地域猫」ではありません。周辺住民への説明や話し合いもなく、勝手に行動されては迷惑になります。
「地域猫」は、猫のテリトリーに関わる周辺住民たちで話し合い、合意が得られている(全員賛成でなくても、反対しないで見守る)ことがポイントになります。
最近では、TNR(捕獲、手術、戻す)で猫の数を増やさない活動をしている人達もいますが、それで終わってはまだ途中で、「地域猫」は手術後戻した後の世話を住民が認めた人(猫の世話人)がすることが大切です。

地域猫活動を行うと、捨てられる猫が増えるのでは?

猫を捨てる、置き去る行為は犯罪です。
「動物の愛護及び管理に関する法律第44条第2項」で、「愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」とあります。
見かけたら直ちに警察へ通報しましょう。
地域で世話する猫が増えては堪りませんから、住民の監視も必要です。場所によっては、地域のパトロールを実施しています。これは捨て猫防止の意味だけではなく、地域の防犯、防災にも役立っています。

地域猫活動を始めるにはどうしたらいいの?

世話をしている人から地域猫を目指す場合

  1. 複数の協力者を見つけること。

    単独行動が好きな猫派の人達はこれが難しいと言いますが、猫のためだと自分に言い聞かせて努力してください。
    自分以外にも世話をしている人、世話したい人が必ず近くに居るので、まず複数の協力者を見つけ出すことから始めてみましょう。
    やはり中心となるのは、エサを与えている人が良いでしょうが、猫好きだけではなく、猫被害で困っている人や猫嫌いな人も入ると信用が得られ、活動が継続する傾向があります。

  2. 猫の世話をしている人が、周辺住民から認めてもらえる人になること。

    これは、猫の世話だけでのことを言っているのではなく、日頃からよい人間関係を築いておくということです。地域にとって必要な人、良い人、大切な人であれば、多少のことではトラブルの発生はなくてすみます。地域の模範となるような人になってください。

    そこで、まず挨拶から始めることを勧めます。挨拶は、人と人を結ぶ基本です。先に挨拶されて返事ができなかったら、何だか自分が恥ずかしい感じになります。先にどんどん挨拶をしていくと必ず返事が返ってきます。これで一歩前進し、次は会話へと進んでいきます。声を掛け合っていくと必ず心は通じあうようになります。その会話の中からお互いの言い分を理解し、お互いが譲り合いの心で接していく気持ちの余裕を持つことです。会話が下手だという人も誠意を持って接すれば必ず心は通じます。

  3. 自分の活動情報を周辺に提供すること。

    うまく説明出来ない人は、あなたの主旨や活動内容(エサ場、時間、世話している頭数、排泄場所)などをチラシにして、名前を明確にしながら地域の人に知ってもらう努力をすることです。かなり勇気がいることですが、猫のことを思う気持ちが強いのならば、怒ることなく冷静に対応しないと、人も猫も地域の嫌われ者になってしまいます。
    地域内で良い人間関係が出来てくれば、猫の存在も「絶対ダメ」から「多少見守る」方へ傾いていきます。
    猫のことだけでなく地域の環境問題に関わっている意識を持つことが大切です。

  4. 地域での理解が進めばカンパやバザーを実施して、不妊去勢手術費用を捻出することです。

    費用を一人で負担する必要は無く、地域の理解があれば費用の捻出は容易です。今以上に増やさないという原則を守るためには、絶対に必要なことです。

  5. 自分の考えや活動実績を持って行政機関に相談してみましょう。

    自治会・町内会や周辺住民への連絡や調整に協力してくれます。また、アドバイスしてくれる猫活動ボランティアなどを紹介してくれます。

  6. 行政が自治会・町内会へ「地域猫活動」を説明し、実際に個人で活動している人がいるので住民の活動にした方が良い旨を話します。

自治会・町内会等の地域から猫の問題解決を目指す場合

地域において猫に関する苦情が出始めると頭を痛めるのは、自治会長や町内会長、班長、民生委員などの人達で、この人達を中心に始める方法があります。

  1. 地域で共通認識を持つこと。

    地域(自治会、町内会、班等)で猫に関わる問題を解決する、環境問題を解決するという共通の意識を持つことです。
    「行政で捕獲処分は行わない。」「エサの与え方が問題」「猫の増えすぎが問題」「猫のフンが問題」など好き嫌いの感情だけでなく、どうすれば苦情が減るかを話し合います。
    この時点で行政に相談すると、「地域猫活動」の資料や進め方をコーディネートしてくれます。

  2. 地域内の猫に関する状況を把握すること。

    「どの場所にどれ位の外飼いの猫、ノラ猫が存在し、悪戯をしているのか。」「エサはどの辺で、いつ頃与えている人がいるか。」「苦情の原因は何なのか。」などの情報を集めます。
    猫マップ作成も一つの方法です。これは、屋外で生活する猫の数を把握するだけが目的ではなく、地域の人に関心を持ってもらうための手法です。
    会館等に大きな地図を貼り、猫で気が付いた事をみんなに記入してもらいます。みんなが気にかけ、参加し、記入する事に大きな意味があります。アンケート調査も有効な手段です。
    決してエサやりを止めさせるためのものではなく、この地域で人と猫が共存するためのヒントを探します。

  3. 地域での話し合い
    1. 地域での目標を決めること。

      この地域ではどうしたいのか、どうなればいいのかをみんなで話し合います。町内会・自治会等の地域の住民を代表するような組織が主体で話し合いの場を設定し、この話し合いの中で地域の猫として適切に管理し、増えない事を条件に共存を目指す方向で意見がまとまれば、「地域猫活動」の始まりです。

      • 役員だけとか一部の人の意向だけで判断しないこと。
      • 住民みんなで十分話し合うこと。
      • 住民が理解した上で始めること。
    2. 地域のルールを決めること。

      地域のルールは、地形、生活環境、住民意識等によって違うため、よく話し合って決めます。

    3. 役割分担を決めること。

      地域で適切に飼育管理するための役割分担を決めます。 エサ、掃除、手術、資金、広報、監視等、無理なくできる人達が担当し、猫好きや特定の人だけが活動するのではなく、住民の問題として多くの人が関わり、協力しながら実施します。

  4. 活動開始
    1. 不妊去勢手術の実施
      1. 手術を必要とする外猫、ノラ猫の把握をすること。
      2. 捕獲を実施する場合は、猫活動ボランティアの協力を得ること。
      3. ノラ猫の手術に協力してくれる動物病院を探すこと。
      4. 手術費用を捻出すること。
        募金やカンパ、バザーの開催等によって捻出します。
        行政からの補助金や助成金があるかもしれないので確認しましょう。
    2. 猫の飼育管理

      地域のルールに従って、住民である担当者が中心となって住民の協力を得ながら実施します。現在、猫の世話をしている人が積極的に担当するのが良いでしょう。

      ※地域猫活動で言う「猫の世話をする人」は、住民達の話し合いの中で認められた人であり、行政が認定する他の地域の人のことではありません。

    3. どうしても共存ができない人は、猫が寄らない環境を作って自己防衛し、地域住民が実施する活動を見守ること。

      不備があれば意見をする監視の役目を担いましょう。

  5. トラブルや不備が発生した場合

    トラブルや不備の発生原因を把握し、改善されるように再度みんなで話し合い、ルールを検討すること。

施設・敷地の管理者が明らかな場合(工場、学校、病院、神社など)

  1. 施設・管理者とよく話し合うこと

    話し合いの場の設定や調整には、行政の協力をお願いしましょう。
    共存の主旨で了解を得た場合には、管理者の意見を十分に考慮してルールを決めてから「地域猫活動」を始めましょう。

  2. 施設・管理者から認められない場合は、その場所で世話はできません。エサの場所を施設外に移動させ、理解者を得る努力から始めましょう。

地域猫活動によって得られる成果とは?

他に良い解決方法がないならば、実施してみる価値はあります。

  1. 苦情の一番多いフン等が、排泄場所の設置や適切に清掃されることで限りなく除去されるとともに、ゴミや落ち葉などの清掃にも波及し町の美化に大きく貢献します。
  2. エサについても、一定の場所、時間、量で制限され、対面でのエサやりになるため、置きエサなどによる不衛生な環境が改善し、猫もゴミをあさる必要がまったくなくなります。
  3. 不妊去勢手術を徹底することで、子猫が生まれることを防げるため増えることがなく、発情期特有の鳴き声も少なくなります。猫特有の尿の臭いやマーキングによる臭いも薄くなり、生殖器の病気も防げます。
  4. 猫を通じて住民同士のコミュニケーションが図れるようになり、ゆとりのある町、地域になっていきます。
  5. 地域で協力して猫の世話や管理をしている姿を子供達が見て、生命尊重、地域協力、社会性の大切さを学ぶことにつながります。

良い点ばかりが目に付きますが欠点を挙げると、結果がでるまでに時間がかかることです。長い目で見守る心のゆとりを持ってください。

手術のための捕獲はどうすればよいの?

猫活動ボランティアや動物愛護団体、動物病院に相談すると捕獲オリを貸してくれます。頭数が多い場合は、捕獲の手伝いにも協力してくれます。
行政も捕獲オリの貸し出しをしている所もありますので、連絡してみてください。

今すぐ猫の被害を防ぎたいけど何か方法はありますか?

猫が寄ってくるのは、猫にとって生活しやすい環境だからです。
猫にとって居心地が悪くなれば移動していきます。根本的な解決にはなりませんが資料を参考に猫が寄らない方法をためしてみてください。

別紙資料(猫が庭に入らない方法)を参考