地域猫推進寺

ノラ猫にエサをやることへの誤解

「ノラ猫が寄ってきて被害をもたらすから、エサをやるのを止めてほしい」との声は多い。ただ、エサをやるのを止めても、エサ場であるその場所から離れるだけであり周辺には存在している。存在しているからには、フン尿や繁殖について何の対策もしなければ、周辺に被害を広げるだけで根本的な解決にはならない。自分の所だけが良ければいいと言う孤立を好む現代の発想だ。

私は保健所職員当時に、多くのノラ猫にエサを与えてトラブルになった人達と話す機会があったが、みんな猫に対しての愛情があり過ぎて周りの事が見えなくなっていた。優しい気持ちは分かるが、人間の社会で共存するためには相手がいることなので、最低のルールは守る必要がある。
「ここでエサをやることを止めて」と言えば言うほど、隠れてでもエサをやり続けるため、言っても無駄なことを知った。置きエサや撒かれたエサでかえってトラブルが広がってしまったのだ。エサやり禁止は逆効果だった。
エサをやる人達は猫への愛情は深いから、猫が嫌われることは好まない。ならば逆の発想で、きちんとエサを与えて猫が嫌われないように管理してもらえないかを提案したのだ。

地域猫活動では、住民が認めた人がルールに従ってエサを与えて世話をすることが大切な役割の一つである。
(エサを与える時のルール)

  1. 地域で話し合って了解を得た場所と時間でエサを与えること。
  2. 把握する猫と対面してエサを与え、猫の様子や健康状態を把握すること。
  3. エサを食べ終わるのを待って、残ったエサや容器等を片付けて帰ること。絶対に置きエサをしないこと。
  4. エサ場周辺の清潔を心がけること。
  5. エサ場に現れる見慣れない猫や未手術猫を発見したら、早期に捕獲、不妊去勢手術の実施をするため、地域住民に報告相談すること。

エサをやるからノラ猫が増えるというが、増えるのは不妊去勢手術をしないからであり、エサやりを止めてもノラ猫は増える。
逆にエサを与えることで猫の情報が得られ、不妊去勢手術を実施する際には最も重要な役割を果たすことになる。

地域猫活動でエサを与える人とは、地域住民で住民から認められた人のことで、住民からお願いされて世話をしている猫の世話人と呼ぶものであり、単なるノラ猫のエサやりとはまったく違うのである。
住民ではなく他の地域から来てエサを与える人は、地域住民との関わりがなければ「地域猫活動」とは言えない。それは個人の猫愛護活動なので、エサ場の管理者に話をして了解を得てからエサを与えてほしい。それが出来ない人が多く、勝手にエサを与えているから、全てのエサを与える行為が悪い事であると誤解されている。

地域猫活動のように住民の意向を反映させた、管理されたエサやりがあることを知ってほしい。