地域猫推進寺

地域住民の理解と協力が得られない

地域猫活動のポイントの一つに、地域住民の理解と協力を得て、住民の合意を得る必要があるが、「住民が全員一致して合意するなどあり得ない。」と言って諦める人が多数いる。
なぜ地域住民からスムーズに理解と協力を得られないのだろうか?

地域の中には、猫好きや猫嫌い、無関心、猫アレルギー、不衛生で迷惑だと思う人、可哀想、面倒見たいなど、多種多様な意見や立場の住民が多数存在している。
その人達みんなの納得を得ることは至難の業であるが、時間をかけて存分に話し合い、妥協点を見つけていくこのプロセスが、地域猫活動で最も重要なポイントなのである。

ノラ猫の被害で困っているのだから、その解決方法を考え何とかしたいと思うのは誰もが同じであり、飼い主のいない、責任の所在も曖昧なノラ猫のことなのだから尚更、個人ではなく地域としての対応をする必要があるのではないだろうか。
地域を巻き込んだら時間がかかるからと保護、不妊去勢手術を先にしてしまう団体や個人もあるだろうが、長い目で見て地域としてトラブルは解決するのだろうか疑問である。私は、団体や個人の負担だけが増えてしまい、ずっと続く活動になることに同情してしまう。だからこそ、地域で考え、地域で行動するために、話し合いから始めることを勧めている。

話し合いの進め方は、まず話し合うテーマは何か?どうなれば良いのか?という解決するべき課題の特定とゴールの設定をすることである。
ノラ猫問題をテーマとするならば、猫が増え過ぎる、置きエサ、フン問題等のノラ猫や関わる人によるトラブルを解決したいと思うだろう。またゴールは、ノラ猫によるトラブルがなくなり住みやすい地域になることだろう。

ゴールを目指すための話し合いであり、批判や反対を叫んでいても解決はしない。とにかく前向きな意見を出し合ってもらい、その地域に適した可能な方法を探していくことだ。
「エサやりをやめろ」「保健所で処分してもらえ」「どこかへ連れて行け」「全部保護してもらえ」などの無理な意見を言う人もいる。それらの意見の一つに「地域猫活動」を提案して話し合うことになる。

もちろん、他に方法があるなら地域の意見として試してみれば良いが、法的、心情的にも地域猫活動以外はトラブルを解決させる事はできない意見だと思う。
地域猫活動ではハードルが高いとのことで、途中のTNRをまず始める地域も多いが、ノラ猫は増えないが同じ数の猫は戻って生活するため、エサやフンのトラブルは解決しない。
熱心な猫活動ボランティアや団体が存在して活躍してくれるのは嬉しいが、住民が任せきりになって全く活動しなくなってしまう危険もあり、ノラ猫の事を全て丸投げされたり、全てを抱え込まないか心配である。
地域のノラ猫問題は、地域住民で解決してもらうのが一番だと思う。
そのためには、行政が関わって住民の後押しをすることが重要である。

よく誤解される表現に「合意」がある。いろいろな意見を出し合って妥協点を見つけていくことが「合意」である。決して全員が賛成でなくても理解、黙って見守りに賛同してくれれば「合意」されたと言える。

同じような言葉で「同意」がある。みんなの意見を出し合うものではなく、一つの意見について賛成を求めるものである。
最初から「地域猫活動をやりましょう」と切り出すから反感をかうのではないだろうか。一方の意見に対して賛成をすることは最初から「同意」を求めているのであり、ある意味で押し付けになる。意見を聞いてもらえなかった人からは不満だけが残るために、協力が得られないのではないだろうか。

行政は着実に「合意」を進め、地域猫推進の猫活動ボランティアの人たちは「同意」を求めている。間違いない方法だから急ぎたい気持ちは分かるが、地域猫活動はプロセスが重要なのである。
ただ強烈なリーダーシップで成功させた自治会長や猫活動ボランティアさんのいる所も多々あるから、一概には言えない地域の違いもある。

結局、捨てたり置き去りにした人間から始まったノラ猫問題なのだから、人間が手を差し延べることでトラブルのない住みやすい町にするしかないと思う。だから地域住民みんなの理解と協力を得るために、まずは話し合いから始めてほしい。